Adobe Acrobat(Acrobat Reader)を最新バージョンにアップデートしたところ、それまで問題なく印刷できていたPDF文書が急に印刷できなくなった、というトラブルが2026年に入って複数報告されています。「文書を印刷できませんでした。ヘルプページを使用してトラブルシューティングを実行してください」というエラーメッセージが表示され、印刷が途中で止まってしまうケースが典型的です。

本記事では、バージョン26.001.21677から26.001.21771へのアップデートを境に発生する印刷不具合について、Adobe公式コミュニティで報告されている情報を基に、原因と解決策をまとめました。

目次

1. どんな現象が起きているのか

Adobe公式コミュニティフォーラムには、Acrobat・Acrobat Readerを26.001.21745や26.001.21771系のバージョンにアップデートした後、以前は問題なく印刷できていたPDFが印刷できなくなったという報告が複数寄せられています。特に多いのは、縦向きと横向きのページが混在するPDF文書を、印刷オプションの「PDFのページサイズに合わせて用紙を選択」にチェックを入れた状態で印刷しようとすると、用紙の向きが切り替わった箇所でエラーが発生し、そこから先が印刷されないという症状です。

この現象はAcrobat Reader側のフォーラムでも報告されており、Acrobat(有償版)でも同様の不具合が確認されています。特定の1台のPCだけでなく、複数の環境で同じ症状が出ていることから、印刷対象のPDFやプリンター固有の問題ではなく、アップデートによってAcrobat本体の動作が変わったことが原因と考えられています。

2. 原因:保護モード(サンドボックス)との干渉

Acrobat・Acrobat Readerには、悪意のあるPDFファイルによる不正な処理からパソコンを保護するための「保護モード(サンドボックスによる保護)」という機能が標準で搭載されています。この機能は、PDFの表示や印刷といった処理を、通常より制限された領域(サンドボックス)の中で実行することで、脆弱性を悪用した攻撃からユーザーを守る役割を持っています。

今回報告されている印刷トラブルは、アップデート後の印刷処理と、この保護モードの制御との間で不整合が起きていることが原因とみられています。実際に、Adobe公式コミュニティで案内されている回避策も「起動時の保護モードを無効にする」という内容であり、保護モードをオフにすると症状が解消することが多数報告されています。なお、Adobe側から明確な原因の技術的な発表は本記事執筆時点では確認できておらず、あくまでユーザー・コミュニティ側の検証に基づく情報である点はご留意ください。

3. 解決策:起動時の保護モードを無効にする

現時点でもっとも確実性の高い回避策は、Acrobat・Acrobat Readerの環境設定から、起動時の保護モードを無効にする方法です。手順は次の通りです。

  1. Acrobat(またはAcrobat Reader)を起動し、左上の「三本線メニュー」(バージョンによっては「編集」タブ)をクリックします。
  2. 開いたメニューから「環境設定(N)」をクリックします。
  3. 環境設定ウィンドウの左側にある「分類(G)」の一覧から「セキュリティ(拡張)」を選択します。
  4. 右側に表示される「サンドボックスによる保護」の項目内にある「起動時に保護モードを有効にする(M)」のチェックを外します。
  5. チェックを外したら、右下の「OK」ボタンを押して設定を保存します。
  6. 設定変更を反映させるため、Acrobat・Acrobat Readerを一度完全に終了し、再起動します。(変更時に再起動を促すダイアログが表示される場合もあります。)

再起動後、同じPDFファイルで再度印刷を試し、正常に印刷できるかを確認してください。社内やチームで同じ症状が出ている場合は、この手順を共有することで、それぞれのPCで個別に原因を調査する手間を省くことができます。

4. 保護モードを切ってもよいのか(セキュリティ上の注意点)

保護モードは、悪意のあるPDFファイルを開いた際に、パソコンへの不正な処理が及ぶリスクを下げるための機能です。オフにすると、この防御レイヤーが一つ失われることになるため、常時無効化したままにするのは推奨されません。

  • 出典が不明なPDF(メールの添付ファイルや、信頼できないWebサイトからダウンロードしたPDFなど)は、保護モードをオフにしている間は特に注意して取り扱う
  • 印刷トラブルが解消した後も、セキュリティソフトやOSのアップデートは通常通り継続する
  • Adobeから該当バージョンの不具合修正パッチが配信された場合は、保護モードを再度有効に戻すことを検討する

あくまで「印刷ができない」という不具合を一時的に回避するための設定変更であり、恒久的な対応ではないことを踏まえて運用するのが安全です。

5. 保護モード以外に試したい対処法

保護モードの無効化で改善しない場合や、あわせて確認しておきたい項目として、Adobe公式のトラブルシューティングガイドでは次のような対処法が案内されています。

  • 印刷オプションの「PDFのページサイズに合わせて用紙を選択」のチェックを外し、用紙サイズを固定した状態で印刷してみる
  • パソコンを再起動し、メモリやキャッシュをクリアした状態で再度印刷を試す
  • 「ヘルプ」→「アップデートの有無をチェック」から、さらに新しい修正版がリリースされていないか確認する
  • プリンターのケーブル接続や電源を確認し、プリンター自体を再起動する
  • プリンターメーカーが提供する最新のドライバーに更新する
  • 印刷オプションの「注釈とフォーム」欄で「文書と注釈」が選択されているか確認する

どうしても改善しない場合は、Adobe公式サイトから旧バージョンのインストーラーを入手し、問題が発生する前のバージョンに一時的に戻すという方法もあります。ただし、セキュリティパッチが適用されていない古いバージョンを長期間使い続けることは避け、あくまで一時的な対応として利用しましょう。

6. 今後のアップデートで修正される可能性

Adobeは通常、四半期ごとの定期アップデートに加え、重大な不具合が確認された場合には修正版(QFEアップデートなど)を追加で配信することがあります。過去にも、アップデート後に表示崩れなどの不具合が報告され、数日から数週間程度で修正版がリリースされた例があります。

今回の印刷不具合についても、Adobe UserVoiceやコミュニティフォーラムに関連スレッドが立てられており、投票(Vote)や報告が集まることで対応の優先度が上がる可能性があります。同じ症状に困っている場合は、こうしたフォーラムで情報を確認し、自身の環境や症状を報告しておくと、今後の修正状況を把握しやすくなります。

7. まとめ

Acrobat・Acrobat Readerを26.001.21677から26.001.21771系のバージョンにアップデートした後に印刷ができなくなる不具合は、複数のユーザーから報告されている既知の問題です。原因は完全には特定されていませんが、印刷処理と保護モード(サンドボックス)の制御との干渉が疑われており、環境設定の「セキュリティ(拡張)」から「起動時に保護モードを有効にする」のチェックを外すことで、多くのケースで印刷ができるようになることが確認されています。

ただし、保護モードの無効化はセキュリティ上のリスクを伴う一時的な回避策です。改善が確認できたら、印刷オプションの見直しやドライバー更新など他の対処法も併用しつつ、Adobeから修正版が配信された際には保護モードを再度有効に戻すことをおすすめします。

※本記事は、Adobe公式のトラブルシューティングガイドおよびAdobeコミュニティフォーラムに投稿されている報告内容を基に構成したものです。環境によって症状や改善の有無が異なる場合がありますので、あくまで一つの対処法としてご参照ください。